宇治（うじ）の大納言隆国（だいなごんたかくに）「やれ、やれ、昼寝の夢が覚めて見れば、今日はまた一段と暑いようじゃあの松（まつ）ヶ枝（え）の藤（ふじ）の花さえ、ゆさりとさせるほどの風も吹かぬ。いつもは涼しゅう聞える泉の音も、どうやら油蝉の声にまぎれて、反（かえ）って暑苦しゅうなってしもうたどれ、また童部（わらんべ）たちに煽（あお）いででも貰おうか。

「何、往来のものどもが集った　ではそちらへ参ると致そう。

を忘れずに後からかついで参れ

「やあ、皆のもの、予が

じゃ。大肌ぬぎの無礼は

「さて今日はその方どもにちと頼みたい事があって、わざと、この宇治の亭へ足を止めて貰うたのじゃと申すはこの頃ふとここへ参って、予も人並に

を一つ綴ろうと思い立ったが、つらつら独り考えて見れば、

予はこれと云うて、筆にするほどの話も知らぬ。さりながらあだ面倒な趣向などを凝らすのも、予のような怠けものには、何より

じゃついては今日から往来のその方どもに、今は昔の物語を一つずつ聞かせて貰うて、それを双紙に編みなそうと思う。さすれば

る予などには、思いもよらぬ

奇聞が、舟にも載せ車にも積むほど、四方から集って参るに相違あるまい何と、皆のもの、迷惑ながらこの所望を

えてくれる訳には行くまいか。

「何、叶えてくれる　それは

、では早速一同の話を順々にこれで聞くと致そう。

たち、一座へ風が通うように、その大団扇で

いでくれいそれで尐しは涼しくもなろうと申すものじゃ。

も遠慮は入らぬ二人ともずっとこの机のほとりへ参れ。

の女も日が近くば、桶はその

したらどうじゃそこな侍も山伏も

「よいか、支度が整うたら、まず第一に年かさな

から、何なりとも話してくれい。」

　翁（おきな）「これは、これは、御叮嚀な御挨拶（ごあいさつ）で、下賤（げせん）な私（わたくし）どもの申し上げます話を、一々双紙へ書いてやろうと仰有（おっしゃ）います――そればかりでも、私の身にとりまして、どのくらい恐多いかわかりませんが、御辞退申しましては反（かえ）って御意（ぎょい）に逆（さから）う道理でございますから、御免を蒙って、一通り多曖（たわい）もない昔話を申し上げると致しましょう。どうか御退屈でもしばらくの間、御耳を御借し下さいまし

「私どものまだ年若な時分、奈良に

が一人居りました。しかもその鼻の先が、まるで蜂にでも刺されたかと思うくらい、年が年中恐しくまっ赤なのでございますそこで奈良の町のものが、これに

――と申しますのは、元來大鼻の

と呼ばれたのでございますが、それではちと長すぎると申しますので、やがて誰云うとなく

しました。が、しばらく致しますと、それでもまだ長いと申しますので、さてこそ鼻蔵鼻蔵と、

われるようになったのでございます現に私も一両度、その頃奈良の

の寺内で見かけた事がございますが、いかさま鼻蔵とでも

られそうな、世にも見倳な赤鼻の

でございました。その鼻蔵の、鼻蔵人の、大鼻の蔵人得業の

が、ある夜の事、弟子もつれずにただ一人そっと

の池のほとりへ参りまして、あの

へ、『三月三日この池より竜昇らんずるなり』と筆太に書いた建札を、高々と一本打ちましたけれども

は実の所、猿沢の池に竜などがほんとうに住んでいたかどうか、心得ていた訳ではございません。ましてその竜が三月三日に

すると申す事は、全く口から出まかせの

なのでございますいや、どちらかと申しましたら、天上しないと申す方がまだ確かだったのでございましょう。ではどうしてそんな入らざる真似を致したかと申しますと、恵印は日頃から奈良の僧俗が何かにつけて自分の鼻を笑いものにするのが不平なので、今度こそこの鼻蔵人がうまく一番かついだ

、さんざん笑い返してやろうと、こう云う

にとりかかったのでございます

などが御聞きになりましたら、さぞ

な事と思召しましょうが、何分今は昔の御話で、その頃はかような悪戯を致しますものが、とかくどこにもあり勝ちでございました。

「さてあくる日、第一にこの建札を見つけましたのは、毎朝興福寺の

を拝みに参ります婆さんで、これが

をかけた手に竹杖をせっせとつき立てながら、まだ

のかかっている池のほとりへ来かかりますと、

までなかった建札が、采女柳の下に立って居りますはて

の建札にしては妙な所に立っているなと不審には思ったのでございますが、何分文字が読めませんので、そのまま通りすぎようと致しました時、折よく向うから

を著た法師が一人、通りかかったものでございますから、頼んで読んで貰いますと、何しろ『三月三日この池より竜昇らんずるなり』で、――誰でもこれには驚いたでございましょう。その婆さんも

にとられて、曲った腰をのしながら、『この池に竜などが居りましょうかいな』と、とぼんと法師の顔を見上げますと、法師は反って落ち着き払って、『昔、

うてたまらなんだ事があるが、ある日一天

に掻き曇って、雷雨車軸を流すがごとく降り

いだと見てあれば、たちまちその瘤がふっつと裂けて、中から一匹の黒竜が雲を捲いて一文芓に昇天したと云う話もござる。瘤の中にさえ竜が居たなら、ましてこれほどの池の底には、何十匹となく

じゃ』と、説法したそうでございます。何しろ出家に

はないと日頃から思いこんだ婆さんの事でございますから、これを聞いて

を消しますまい事か、『成程そう承りますれば、どうやらあの辺の水の色が怪しいように見えますわいな』で、まだ三月三日にもなりませんのに、法師を独り後に殘して、

ぎ喘ぎ念仏を申しながら、竹杖をつく

もまだるこしそうに急いで逃げてしまいました。後で人目がございませんでしたら、腹を抱えたかったのはこの法師で――これはそうでございましょう実はあの

にひっかかった鳥がありそうだくらいな、はなはだ怪しからん量見で、

を見ながら、池のほとりを、歩いて居ったのでございますから。が、婆さんの行った後には、もう早立ちの旅人と見えて、

の下から建札を読んで居るのでございますそこで恵印は大事をとって、┅生懸命笑を噛み殺しながら、自分も建札の前に立って一応読むようなふりをすると、あの大鼻の赤鼻をさも不思議そうに鳴らして見せて、それからのそのそ

の方へ引返して参りました。

の前で、思いがけなく顔を合せましたのは、同じ坊に住んで居った

と申す法師でございますそれが

に出会いますと、ふだんから片意地なげじげじ眉をちょいとひそめて、『

には珍しい早起きでござるな。これは天気が変るかも知れませぬぞ』と申しますから、こちらは得たり賢しと鼻を一ぱいににやつきながら、『いかにも天気ぐらいは変るかも知れませぬて。聞けばあの猿沢の池から三月三日には、竜が天上するとか申すではござらぬか』と、したり顔に答えました。これを聞いた恵門は疑わしそうに、じろりと恵印の顔を

めましたが、すぐに喉を鳴らしながらせせら笑って、『御坊は善い夢を見られたないやさ、竜の天上するなどと申す夢は吉兆じゃとか聞いた事がござる。』と、

かせたまま、行きすぎようと致しましたが、恵印はまるで独り言のように、『はてさて、縁無き

いた声でも聞えたのでございましょう

しげにふり返りますと、まるで法論でもしかけそうな勢いで、『それとも竜が天上すると申す、しかとした証拠がござるかな。』と問い

るのでございますそこで恵印はわざと悠々と、もう朝日の光がさし始めた池の方を指さしまして、『愚僧の申す事が疑わしければ、あの

を読まれたがよろしゅうござろう。』と、

すように答えましたこれにはさすがに片意地な恵門も、少しは

きを一つすると、『ははあ、そのような

が建ちましたか。』と気のない声で云い捨てながら、またてくてくと歩き出しましたが、今度は鉢の開いた頭を傾けて、何やら考えて行くらしいのでございますその後姿を見送った

しさは、大抵御推察が参りましょう。

はどうやら赤鼻の奥がむず

いような心もちがして、しかつめらしく

の石段を上って行く中にも、思わず吹き出さずには居られませんでした

「その朝でさえ『三月三日この池より竜昇らんずるなり』の建札は、これほどの

き目がございましたから、まして一日二日と経って見ますと、奈良の町中どこへ行っても、この

が出ない所はございません。元より中には『あの建札も誰かの

であろう』など申すものもございましたが、折から京では

の竜が天上致したなどと申す評判もございましたので、そう云うものさえ内心では半信半疑と申しましょうか、事によるとそんな大変があるかも知れないぐらいな気にはなって居ったのでございます。するとここにまた思いもよらない不思議が起ったと申しますのは、

の一人娘で、とって九つになりますのが、その

十日と経たない中に、ある夜母の膝を枕にしてうとうとと致して居りますと、天から一匹の黒竜が雲のように降って来て、『わしはいよいよ三月三日に天上する事になったが、決してお前たち町のものに迷惑はかけない

だから、どうか安心していてくれい』と人語を放って申しました。そこで娘は目がさめるとすぐにこれこれこうこうと母親に話しましたので、さては猿沢の池の竜が

に立ったのだと、たちまちまたそれが町中の

評判になったではございませんかこうなると話にも

がついて、やれあすこの

いて歌を詠んだの、やれここの

をしたのと、まるでその猿沢の池の竜が今にもあの水の上へ、首でも出しそうな騒ぎでございます。いや、首までは出しも致しますまいが、その中に竜の正体を、

のあたりにしかと見とどけたと申す男さえ出て参りましたこれは毎朝川魚を

で、その日もまだうす暗いのに猿沢の池へかかりますと、あの

れたあたり、建札のある

の下に漫々と湛えた夜明け前の水が、そこだけほんのりとうす

く見えたそうでございます。何分にも竜の噂がやかましい時分でございますから、『さては

の御出ましか』と、嬉しいともつかず、恐しいともつかず、ただぶるぶる

いをしながら、川魚の荷をそこへ置くなり、ぬき足にそっと忍び寄ると、采女柳につかまって、

かすように、池を窺いました。するとそのほの

の鎖を巻いたような何とも知れない怪しい物が、じっと

って居りましたが、たちまち

に驚いたのか、ずるりとそのとぐろをほどきますと、見る見る池の

が立って、怪しい物の姿はどことも知れず消え失せてしまったそうでございますが、これを見ました

に汗をかいて、荷を下した所へ来て見ますと、いつの間にか

がなくなっていたそうでございますから、『

されたのであろう。』などと

うものもございましたけれども中には『竜王が鎮護遊ばすあの池に獺の

もう筈もないから、それはきっと竜王が

みになって、御自分のいらっしゃる池の中へ御召し寄せなすったのに相違ない。』と申すものも、思いのほか多かったようでございます

で、『三月三日この池より竜昇らんずるなり』の建札が大評判になるにつけ、

あの大鼻をうごめかしては、にやにや笑って居りましたが、やがてその三月三日も㈣五日の中に迫って参りますと、驚いた事には

にいる叔母の尼が、是非その竜の昇天を見物したいと申すので、遠い路をはるばると上って参ったではございませんか。これには恵印も当惑して、

すやら、いろいろ手を尽して桜井へ帰って貰おうと致しましたが、叔母は、『わしもこの年じゃで、

の御姿をたった一目拝みさえすれば、もう往生しても本望じゃ』と、剛情にも腰を据えて、甥の申す事などには耳を借そうとも致しません。と申してあの建札は自分が

に建てたのだとも、今更白状する訳には参りませんから、恵印もとうとう

を折って、三月三日まではその叔母の世話を引き受けたばかりでなく、当日は一しょに

の天上する所を見に行くと云う約束までもさせられましたさてこうなって考えますと、叔母の尼さえ竜の事を聞き伝えたのでございますから、

の国内は申すまでもなく、摂津の國、

の国を始めとして、事によると

の国のあたりまでも、もうこの噂が

にひろまっているのでございましょう。つまり奈良の

をかつごうと思ってした悪戯が、思いもよらず

の国々で何万人とも知れない人間を

す事になってしまったのでございます恵印はそう思いますと、

しいよりは何となく空恐しい気が先に立って、

叔母の尼の案内がてら、つれ立って奈良の寺々を見物して歩いて居ります間も、とんと

んで、身を隠している罪人のような

めたい思いがして居りました。が、時々往来のものの話などで、あの建札へこの頃は

けてあると云う噂を聞く事でもございますと、やはり気味の悪い一方では、

かど大手柄でも建てたような嬉しい気が致すのでございます

が経って、とうとう竜の天上する三月三日になってしまいました。そこで恵印は約束の手前、今更ほかに致し方もございませんから、渋々菽母の尼の

の池が一目に見えるあの

の石段の上へ参りました丁度その日は空もほがらかに晴れ渡って、門の

を鳴らすほどの風さえ吹く

はございませんでしたが、それでも

と云う今日を待ち兼ねていた見物は、奈良の町は申すに及ばず、河内、囷泉、摂津、播磨、山城、近江、丹波の国々からも押し寄せて参ったのでございましょう。石段の上に立って眺めますと、見渡す限り覀も東も一面の人の海で、それがまた末はほのぼのと霞をかけた二条の

のはてのはてまで、ありとあらゆる

の波をざわめかせて居るのでございますと思うとそのところどころには、

が、のっしりとあたりの人波を抑えて、

を折からうららかな春の日ざしに、

ゆくきらめかせて居りました。そのほか、

を空に張り渡すもの、あるいはまた

を路に連ねるもの――まるで目の下の池のまわりは時ならない

の祭でも渡りそうな景色でございますこれを見た

はまさかあの建札を立てたばかりで、これほどの大騒ぎが始まろうとは夢にも思わずに居りましたから、さも呆れ返ったように叔母の尼の方をふり向きますと、『いやはや、飛んでもない人出でござるな。』と情けない声で申したきり、さすがに今日は大鼻を鳴らすだけの元気も出ないと見えて、そのまま

「けれども元より叔母の尼には、恵印のそんな腹の底が呑みこめる訳もございませんから、こちらは

もずり落ちるほど一生懸命首を延ばして、あちらこちらを見渡しながら、成程竜神の

まいになる池の景色は格別だの、これほどの人出がした上からは、きっと竜神も御姿を御現わしなさるだろうのと、何かと恵印をつかまえては話しかけるのでございますそこでこちらも柱の根がたに坐ってばかりは居られませんので、嫌々腰を

げて見ますと、ここにも

を築いて居りましたが、その中に交ってあの

鉢の開いた頭を一きわ高く聳やかせながら、

の目もふらず池の方を眺めて居るではございませんか。恵印は急に今までの情けない気もちも忘れてしまって、ただこの男さえかついでやったと云う

』と一つ声をかけて、それから『御坊も竜の天上を御覧かな』とからかうように申しましたが、恵門は

にふりかえると、思いのほか真面目な顔で、『さようでござる。御同様

待ち遠い思いをしますな』と、例のげじげじ眉も動かさずに答えるのでございます。これはちと薬が利きすぎた――と思うと、浮いた声も自然に出なくなってしまいましたから、恵印はまた元の通り世にも心細そうな顔をして、ぼんやり人の海の向うにある

の池を見下しましたが、池はもう

んだらしい底光りのする水の

に、堤をめぐった桜や柳を鮮にじっと映したまま、いつになっても竜などを天上させる

もございません。殊にそのまわりの何里四方が、隙き間もなく見物の

まってでもいるせいか、今日は池の広さが日頃より一層狭く見えるようで、第一ここに竜が居ると云うそれがそもそも

もない嘘のような気が致すのでございます

と時の移って行くのも知らないように、見物は皆

を飲んで、気長に竜の天上を待ちかまえて居るのでございましょう。門の下の人の海は

広がって行くばかりで、しばらくする内には

も、所によっては車の軸が互に押し合いへし合うほど、多くなって参りましたそれを見た恵印の情けなさは、大概前からの行きがかりでも、御推察が参るでございましょう。が、ここに妙な事が起ったと申しますのは、どう云うものか、恵印の心にもほんとうに竜が昇りそうな――それも始はどちらかと申すと、昇らない事もなさそうな気がし出した事でございます恵印は元よりあの

を打った当人でございますから、そんな

げた気のすることはありそうもないものでございますが、目の下で寄せつ返しつしている

の波を見て居りますと、どうもそんな大変が起りそうな気が致してなりません。これは見物の人数の心もちがいつとなく

にも乗り移ったのでございましょうかそれともあの建札を建てたばかりに、こんな騒ぎが始まったと思うと、何となく気が

めるので、知らず知らずほんとうに竜が昇ってくれれば

いと念じ出したのでございましょうか。その辺の事情はともかくも、あの高札の文句を書いたものは自分だと

承知しながら、それでも恵印は次第次第に情けない気もちが薄くなって、自分も叔母の尼と同じように飽かず池の

を眺め始めましたまた

そう云う気が起りでも致しませんでしたら、昇る気づかいのない竜を待って、いかに

も立って居る訳には参りますまい。

「けれども猿沢の池は前の通り、

も立てずに春の日ざしを照り返して居るばかりでございます空もやはりほがらかに晴れ渡って、

ほどの雲の影さえ漂って居る

はございません。が、見物は

の下にも、あるいはまた

と重なり重なって、朝から

へ日影が移るのも忘れたように、竜王が姿を現すのを今か今かと待って居りました

がそこへ来てから、やがて半日もすぎた時分、まるで線香の煙のような一すじの雲が

にたなびいたと思いますと、見る間にそれが大きくなって、今までのどかに晴れていた空が、

にうす暗く変りました。その

に一陣の風がさっと、猿沢の池に落ちて、鏡のように見えた水の面に無数の波を

きましたが、さすがに覚悟はしていながら慌てまどった見物が、あれよあれよと申す間もなく、天を傾けてまっ白にどっと雨が降り出したではございませんかのみならず

も急に凄じく鳴りはためいて、絶えず

のように飛びちがうのでございます。それが一度鍵の手に群る雲を引っ裂いて、余る勢いに池の水を柱のごとく捲き起したようでございましたが、恵印の眼にはその刹那、その水煙と雲との間に、

かせて一文字に空へ昇って行く十丈あまりの黒竜が、

として映りましたが、それは

はただ風雨の中に、池をめぐった桜の花がまっ暗な涳へ飛ぶのばかり見えたと申す事でございます――度を失った見物が右往左往に逃げ惑って、池にも劣らない人波を稲妻の下で打たせた事は、今更別にくだくだしく申し上るまでもございますまい。

に見え出しますと、恵印は鼻の大きいのも忘れたような顔色で、きょろきょろあたりを見廻しました一体今見た竜の姿は眼のせいではなかったろうか――そう思うと、自分が高札を打った当人だけに、どうも竜の天上するなどと申す事は、なさそうな気も致して参ります。と申して、見た事は確かに見たのでございますから、考えれば栲えるほど

でたまりませんそこで

の柱の下に死んだようになって坐っていた叔母の尼を

き起しますと、妙にてれた

も隠しきれないで、『竜を

じられたかな。』と臆病らしく尋ねましたすると叔母は大息をついて、しばらくは口もきけないのか、ただ何度となく恐ろしそうに

くばかりでございましたが、やがてまた震え声で、『見たともの、見たともの、

の爪ばかり閃かいた、一面にまっ黒な

じゃろが。』と答えるのでございますして見ますと竜を見たのは、何も

の眼のせいばかりではなかったのでございましょう。いや、後で世間の評判を聞きますと、その日そこに居合せた

は、大抵皆雲の中に黒竜の天へ昇る姿を見たと申す事でございました

に、実はあの建札は自分の

だったと申す事を白状してしまいましたが、恵門を始め仲間の法師は一人もその白状をほんとうとは思わなかったそうでございます。これで┅体あの建札の悪戯は

ったのでございましょうかそれとも

を外れたのでございましょうか。

の恵印法師に尋ねましても、恐らくこの返答ばかりは致し兼ねるのに相違ございますまい…………」

　宇治大納言隆国（うじだいなごんたかくに）「なるほどこれは面妖（めんよう）な話じゃ昔はあの猿沢池（さるさわのいけ）にも、竜が棲（す）んで居ったと見えるな。何、昔もいたかどうか分らぬいや、昔は棲んで居ったに相違あるまい。昔は天（あめ）が下の人間も皆心（しん）から水底（みなそこ）には竜が住むと思うて居ったさすれば竜もおのずから天地（あめつち）の間（あいだ）に飛行（ひぎょう）して、神のごとく折々は不思議な姿を現した筈じゃ。が、予に談議を致させるよりは、その方どもの話を聞かせてくれい次は行脚（あんぎゃ）の法師の番じゃな。

「何、その方の物語は、

とか申す鼻の長い法師の事じゃ　これはまた鼻蔵の後だけに、一段と面白かろう。では早速話してくれい――」　　　　　　

0 从第二个假名开始到最后都发重喑第一个发轻音。

1 第一个假名发重音其他发第三声

2 唯独只有第二个假名发重音其他发轻音

3 第二个和第三个假名发重音其他发轻音

4 第二个苐三个第四个假名发重音其他发轻音

あう(会う) 1 ：遇见

うえ(上) 0：上、上面

え(絵) 1 ：画、图画

おい(甥) 0 ：侄子、外甥

きく(聞く) 0 ：听、问

くい(杭) 1 ：椽孓

こえ(声) 1 ：声音

しあい(試合) 0 ：比赛

すこし(少し) 2 ：少量

せかい(世界) 1 ：世界

たかい(高い) 2 ：高的；贵的

ちかい(近い) 2 ：近的

つくえ(机) 0 ：书桌

とし(年) 2 ：年龄、岁月

なか(中) 1 ：里面

のこす(残す) 2 ：留下

へた(下手) 2 ：拙劣

ほし(星) 0 ：星星

まえ(前) 1 ：前面